シンエヴァ感想その3(ネタバレ)

今日NHK庵野秀明スペシャルを見たので、いい機会だと思い感想その2を書いた後溜まった考えをまとめる。


黒波=風立ちぬの菜穂子

Qの完成後、鬱になった庵野が回復するきっかけとなったのは、風立ちぬで主人公である二郎の声優を演じた事だと言われている。風立ちぬで妻の菜穂子の死後、二郎は夢の中で菜穂子と再会し「あなた、生きて」と励まされる。これは宮崎から庵野へのメッセージでもあったのは明らかだ。つまりシンジが黒波の死によって鬱が寛解したのはまさに庵野が経験したことでもあったのだ(そして丁寧に描写された農業シーンはジブリへのオマージュとも受け取れる)。


渚カヲル=碇ゲンドウの父性

岡田斗司夫の解説で、シンエヴァ劇中でカヲルがゲンドウの服を着ていたり、ゲンドウが乗った13号機が立て膝をついたポーズがカヲルと被っていた事からカヲル=ゲンドウである事は明らかだという話がされていた。自分は気づかなかったがその通りだと思った。


庵野の父親=碇ゲンドウ

NHKの特集で庵野が自身の父親の話をするシーンがあった。庵野の父は仕事中の事故で片足を失っていた。庵野は「父は世の中を恨んでました。自分のミスでもない事故でどうしてこんな目に遭わなければならないのかと。そしてその恨みは自分にも向けられていました。」と語る。この喪失と世間への恨みは明らかに碇ゲンドウの設定と重なる。シンジ=庵野秀明という話はよく耳にしていたが、親までモチーフにしていたのは驚きだった。


ラストシーンの解釈

ここまでエヴァ庵野私小説的な話なのであればシンエヴァの最後のシーンはまた違った解釈ができる。庵野の生まれ故郷である宇部新川駅にてシンジの向かい側のホームで佇むカヲルとレイは生まれ変わったゲンドウとユイであり、庵野が憧れていた理想の親の姿であったのだろう。そしてマリがカヲルとレイを眺めているシンジに目隠しをしたりDSSチョーカーをあのタイミングで外すのはマリ=モヨコ夫人が庵野が持つ理想の親への執着から解放したと解釈できるだろう。