シンエヴァ感想その2(ネタバレ)

TV版、旧劇のテーマは「他者との断絶(そしてそれを乗り越える勇気)」だった。では新劇のテーマとは何だったのか。


それは「寓話からの脱出」ではないか。


何故、物語ではなく寓話なのか。その理由は既にTV版で完結していたものを新劇で復活させてしまったからだ(旧劇とコミックはTV版を補完するものだったので繰り返しではない)。


物語は繰り返されると寓話化してしまう。寓話化すると登場人物は運命が固定されてしまう。ウサギとカメの勝負は必ずカメが勝つように、カヲルは必ずシンジと仲良くなり目の前で死ぬ事が定められてしまう。


ではどうやってこのループから抜け出したのか。それは真希波マリを使った自己言及によるものだった。


マリが「イスカリオテのマリア」と呼ばれるならシンジはキリストであるし、それはエヴァの物語が寓話化されているという自己言及でもある。いい匂いやワンコ君という表現は死の運命とそれに縛られている事を暗示している。アスカに対するお姫様という表現は孤独の牢獄に閉じ込められて助けを待っているという事なのだろう。そして固着した運命に言及する事はそれを自覚し打破する事に繋がる。


アスカは旧劇、新劇を通して孤独に戦って最後はエヴァに食べられて死ぬ事を繰り返していた。しかしシンエヴァでは13号機に捕食される寸前にアスカのオリジナルと呼ばれる影に引き込まれ、その後精神世界内でシンジからの告白と相田ケンスケのサポートによって孤独から救済された。


レイはシンジをエヴァと補完計画に引き込む役を繰り返し担っていたが、破でそれに背いてエヴァに自縛しシンジを遠ざけていた。そしてシンジによって初号機から救出される事でその運命から逃れた。


ミサトは自身が母になり、かつての父をなぞるように子のために命を投げ打ってシンジに希望を託すことで父の呪縛から解放された。


そしてシンジはユイにより救世主の運命から逃れ、ゲンドウはユイとともに死ぬ事でユイの元に辿り着いた。


エヴァという寓話からの脱出はまたシンジを中心としたハーレムの解散に繋がった。アスカはもうシンジの横で復活せず、レイとカヲルは遠くにいてシンジを見ない。傍にいるマリも傍観者としての役割は終えているのでシンジの元を去ってしまうかも知れない。寓話から脱出するという事はその登場人物間の縁(えにし)が切れてしまうという事で、これが「さようなら全てのエヴァンゲリオン」に繋がる。そしてこれはエヴァ続編説に対する明確な答えでもあると思う。