シンエヴァ感想(ネタバレ)

マイナス宇宙での歪なCGとメタ表現について

前半の見事な3DCG映像から一転、マイナス宇宙に突入するといびつさが残る、まるでゲームの様な映像にウッとなった。おそらくゲンドウの認知の歪みを表現しているのだろう(巨大綾波や劇中劇など)。自分はヴェイパーウェイブ味を感じたし、映像作品として破綻しているのでは?と不安になった。また途中でタイトルロールや鉛筆描きもながれるなど旧劇のようなメタ表現も見られた。


真希波マリといい匂いついて

マリは冬月から「イスカリオテのマリア」と呼ばれていた。ググるとイエスの足に香油をかけて清めた人物らしい。その後にイエス磔刑にされるので彼女はそれを予見していたと言われている。いい匂いとはつまり死の予言であり、匂いが変わったとはその運命から逃れたことを示しているのだろう。


神木隆之介エヴァの呪縛

劇中最後のシンジの声が神木隆之介になっていた。パンフレットの緒方へのインタビューにも庵野が「14才の心を持ち続けた」緒方に対して感謝を述べたと書かれている。つまり庵野にとって緒方は14才のシンジそのものであり、救世主の運命から逃れて成長することができたシンジはもはや緒方が演じるべきではないとのことなのだろう。庵野エヴァとシンジにさよならをしたのだ。ここは本当に感動的で、パンフを読みながら目頭が熱くなった。


結局ループものだったのか

式波アスカの眼帯は旧劇からの繋がりではなく、第9使徒と融合してしまった身体の使徒化を抑えるために埋め込まれた封印柱を覆うものだった。ここでループ説の芽は無くなったと思ったが、シンジが「今度は〜作り直す」などループを匂わせる発言をしていたのでよくわからない。ただこれは作品世界でのループというよりは、現実世界でエヴァという作品が何回も作り直されているというメタ発言に聞こえた。何も分からなかったシンジが実は一番メタに近づいているのも皮肉な話だ。


残った謎について

考察は出てくるだろうが、自分はもうかなり満足というか納得してしまった。コミック版も納得があったが、やはり庵野が終わらせたというのがとても大きかった。


最後にシンジを見なかったレイ

劇中の最後にシンジがいる場所と反対側のホームにレイとカヲルが佇んでいた。その時レイはシンジではなくカオルの方を向いていた。TV版エヴァの第一話からシンジはずっとレイの幻影を見ていた。そのレイはいつもシンジを見つめていたが、今回はシンジを見ていない。つまりエヴァという物語が終わった事で彼らもシンジと親密になり目の前で死ぬという運命から解放されたのだ。レイはシンジに本当のさよならが出来たのだ。ここも感動的だった。